新電力ニュース
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グラフで見る世界のエネルギー②

■エネルギー政策でもっとも大事な点は、「安全性(Safety)」を前提とした上で、「エネルギーの安定供給(Energy Security)」を第一に考え、「経済効率性(Economic Efficiency)」の向上、つまり低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に「環境への適合(Environment)」を図ることにあります。この「3E+S」の追求は、各国のエネルギー政策に共通しています。さまざまなグラフを通して、世界各国の「3E」の状況を見てみましょう。2回目は、ひとつめの「E」である「エネルギーの安定供給(Energy Security)」に関わる、「輸入先の多様化」の状況を紹介します。


エネルギーの安定供給に必要なこと
エネルギーの安定供給に必要なこと

前回でご紹介したように、エネルギーを安定的に供給するためには、「エネルギー源となる燃料などを安定的に調達する」ことと、「継続的にエネルギー供給を確保する」ことが必要となります。

このような「エネルギーの安定供給」において、世界各国がどのような状況にあるか、比較する場合に役立つのが、①エネルギー自給率、②エネルギー輸入先の多様化、③停電時間、という3つの指標です。前回は「①エネルギー自給率」について各国の状況を見ましたが、「②エネルギー輸入先の多様化」、中でも「化石燃料の輸入先の多様化」についてはどういう状況にあるのでしょう?

「エネルギーの安定供給」を評価するための3つの指標②化石燃料の輸入先の多様化

日本のように自給率が低い水準にある国は、エネルギー資源の調達先(輸入先)が特定の国・地域にかたよらないようにすることが大切です。調達先を分散させることで、政治、経済、社会情勢の変化に過度に左右されるリスクを減らし、エネルギーの確保を安定的にすることが可能になるからです。こうした「輸入先の多様化」は、「エネルギーの安定供給」を実現するためにきわめて重要なポイントのひとつです。

では、主要国のエネルギーの調達先はどのようになっているのでしょうか。資源エネルギー庁では、原油・天然ガス・石炭の3種のエネルギー源それぞれについて、主要国の輸入先を調べ、どの産出国がどれくらいの割合を占めているのか(寡占度)を算出。0点~10点までの点数に換算して評価をおこないました。

なお、計算にあたっては、輸入量のシェアなどの数値のほか、輸入先である産出国の「カントリーリスク」も数値化して折りこみました。「カントリーリスク」とは、対象国の政治・経済・社会環境が混乱したり不安定になったりすることで、価格が変動するといった何らかの損失をこうむるリスクのことを指します。

その結果、2014~2016年のデータでは、安定供給の評価の高い順から、フランス、日本、ドイツ、英国、米国となりました。

主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価

主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成


主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価順位

主要国のエネルギー輸入先に関するリスク評価順位

(出典)OECDカントリーリスク評価などを基に資源エネルギー庁作成

主要国の評価はどうなっているの?

では、それぞれの国の評価の要因について、見ていきましょう。以下のグラフにおける0~10の点数は、10に近づくほど輸入先が多様化し、リスクが少ないことを表しています。また、各エネルギー源の横にある数字は、化石燃料の輸入量を100%とした時、各エネルギー源の輸入量がどれだけを占めているのかを示しています。赤字は2014年~2016年の平均値を、青字は2008年~2010年の平均値を算出しています。

フランス


フランス

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。


フランスでは、2014~2016年の輸入化石燃料の6割を原油、3割を天然ガス、1割を石炭が占めています。

●原油
輸入先トップ3を合わせても約40%程度を占めるシェアにとどまり、輸入先の多様化が図れているため高得点
●天然ガス
カントリーリスクの少ないノルウェー・オランダからの輸入が50%程度を超えているものの、輸入先の多様化という面で評価がダウン
●石炭
カントリーリスクの高いロシアや南アフリカなどのシェアが増加したため、低い評価

日本


日本

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。


日本では、2014~2016年の輸入化石燃料の5割を原油、2割を天然ガス、3割を石炭が占めています。

●原油
輸入先トップ3のカントリーリスクが、A~Hまでの8段階評価(Aに近づくほどリスクが少ない)中、すべてCより下。また輸入先トップ3のシェアが約70%と高いことから、相対的に低い評価。また、上位2か国(サウジアラビア・UAE)からの輸入量が60%を超え、依存度が高まっている
●天然ガス
カントリーリスクの少ないオーストラリアからの輸入量を増やしており、かつ輸入先国が約20か国に上り、輸入先の多様化の面からも高い評価
●石炭
カントリーリスクの少ないオーストラリアからの輸入量が70%弱を占めているが、輸入先の多様化が図れていないため、低い評価

ドイツ


ドイツ

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。


ドイツでは、2014~2016年の輸入化石燃料の4割を原油が、3割を天然ガスが、3割を石炭が占めています。

●原油
輸入先国は約30か国に上るものの、カントリーリスクの高いロシアへの依存度が高いため、低い評価
●天然ガス
原油と同様にロシアの依存度が高く、低い評価
●石炭
カントリーリスクの低い米国からの輸入が増加したものの、ロシア依存度が上昇したため、評価は若干ダウン

英国


英国

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。


英国では、2014~2016年の輸入化石燃料の4割弱を原油が、5割弱を天然ガスが、2割を石炭が占めています。

●原油
ノルウェーへの依存度が7割弱を占めていたものの、2014年・2015年にはアルジェリアやナイジェリアなどへの輸入多角化を進め、評価は改善
●天然ガス
原油と同様にノルウェーへの依存度が高く、低い評価
●石炭
輸入先トップ3で全体の約75%を占めており、輸入先の多様化が図れていないため、低い評価

米国


米国

(出典)IEA, Oil/Natural gas/Coal Information databaseなどより資源エネルギー庁作成 | %は化石燃料輸入量に占める当該燃料のシェア。上段が2014年~2016年、下段が2008年~2010年。


米国では、2014~2016年の輸入化石燃料の4割強を原油が、3割を天然ガスが、3割弱を石炭が占めています。

●原油
2008~2010年にかけては輸入先トップ3のシェアが合わせて50%に満たず、輸入先の多様化が図れていたが、2014~2016年にかけてカナダへの依存度が高まっており、低い評価
●天然ガス
輸入量のほぼ全量をカナダに依存しており、輸入先の多様化が図れていないため、評価はダウン
●石炭
8割弱をコロンビアのみから輸入しており、輸入先の多様化が図れていないため、低い評価

輸入先の多様化をいかにして図るかは、各国の課題です。輸入先のカントリーリスクを考えつつ、輸入先がかたよらないよう、最適なバランスを模索していくことが求められます。


出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/3es_graph02.html

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