コラム
コラム

産業用蓄電池と系統用蓄電池の違いとは?目的・仕組み・ビジネスモデルを徹底解説

再生可能エネルギーの普及が加速する中で、「蓄電池」への注目度が高まっています。しかし、蓄電池には「産業用蓄電池」と「系統用蓄電池」という2つの異なるタイプが存在します。この2つは単なる規模の違いだけでなく、使用目的や導入主体、ビジネスモデルまで根本的に異なります

本記事では、産業用蓄電池と系統用蓄電池の違いを、目的・仕組み・ビジネスモデルの観点から解説します。BCP対策やコスト削減を目指す企業と、電力市場への参入を検討する事業者では、選択すべき蓄電池が全く異なります。それぞれの特徴を正しく理解し、あなたの組織に最適な選択ができるよう、具体例を交えながら説明していきます。


まずは結論!「誰が、何のために使うか」が根本的な違い

産業用蓄電池と系統用蓄電池を理解する上で最も重要なポイントは、「誰が、何のために使うか」という利用目的と主体の違いです。産業用蓄電池は企業が自社の利益やリスク管理のために導入するものであり、系統用蓄電池は電力事業者が電力網全体の安定化という公共的な目的のために運用するものです。

産業用蓄電池:企業が「自社のため」に使う蓄電池

産業用蓄電池は、工場、オフィスビル、商業施設、病院などの企業が、自社の敷地内に設置して自社の利益のために使用する蓄電池です。その主な目的は、停電時のバックアップ電源確保(BCP対策)、電気料金の削減(ピークカット・ピークシフト)、太陽光発電の自家消費率向上にあります。

たとえば、製造業の工場では、停電が発生すると生産ラインが停止し、大きな損失が発生します。産業用蓄電池を導入することで、停電時でも重要な設備を数時間から数日間稼働させ続けることができ、事業継続性を確保できます。また、電力使用量が多い昼間のピーク時間帯に蓄電池から放電することで、基本料金を削減することも可能です。電気料金が安い夜間に充電し、高い昼間に放電することで、月々の電気代を10〜30%程度削減できるケースもあります。

系統用蓄電池:事業者が「電力網(社会)のため」に使う蓄電池(蓄電所)

一方、系統用蓄電池は、電力会社や蓄電池事業者が電力系統(送配電網)に接続し、電力網全体の安定化や需給調整のために運用する大規模な蓄電設備です。「蓄電所」とも呼ばれ、その規模は数メガワット(MW)から数十メガワットに及びます。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーが大量に導入されると、天候によって発電量が大きく変動するため、電力の需要と供給のバランスを取ることが難しくなります。系統用蓄電池は、電力が余っている時に充電し、不足している時に放電することで、需給バランスを瞬時に調整します。また、系統用蓄電池事業者は、この調整機能を提供する対価として、電力市場(容量市場や需給調整市場)から収益を得るビジネスモデルを構築しています。


【一覧比較表】産業用蓄電池と系統用蓄電池の5つの違い

比較項目 産業用蓄電池 系統用蓄電池
導入主体 企業・工場・商業施設・病院など 電力会社・蓄電池事業者
主な目的 自社のBCP対策、電気料金削減、自家消費率向上 電力系統の需給調整、周波数調整、社会の電力安定供給
設置場所 自社敷地内(工場、オフィス、施設内) 電力系統に直接接続(蓄電所として独立)
規模 数十kWh〜数百kWh程度 数MWh〜数十MWh以上(産業用の数十〜数百倍)
収益モデル 電気料金削減やBCP対策による間接的な経済効果 容量市場・需給調整市場での直接的な収益獲得

「産業用蓄電池」を深掘り解説|企業のBCP対策とコスト削減を実現

産業用蓄電池は、企業が自社の経営課題を解決し、競争力を高めるための実用的なツールです。主に「停電対策(BCP)」「電気料金削減」「太陽光発電の自家消費率向上」という3つの目的で導入されます。

主な目的①:停電対策(BCP・事業継続計画)

産業用蓄電池の最も重要な目的の一つが、停電時のバックアップ電源としての機能です。近年、台風や地震などの自然災害が頻発しており、企業にとって事業継続計画(BCP)の重要性が増しています。停電が発生した場合、製造業では生産ラインの停止、データセンターではサーバーダウンなど、業種によっては致命的な損失が発生します。

たとえば、ある製薬会社が100kWhの産業用蓄電池を導入し、停電時でもクリーンルームの空調設備と製造装置を8時間稼働させられる体制を構築したケースがあります。過去に短時間の停電で製造中のバッチ全体が廃棄になった経験があり、その損失額は数千万円に及びました。蓄電池導入後は、そうしたリスクを大幅に軽減できただけでなく、取引先からの信頼性も向上しています。

主な目的②:電気料金の削減(ピークカット・シフト)

産業用蓄電池のもう一つの重要な目的が、電気料金の削減です。企業の電気料金は、過去1年間で最も電力使用量が多かった時間帯の使用量を基準とする「基本料金」によって決まります。この基本料金を下げるためには、電力使用のピーク(最大需要電力)を抑える「ピークカット」が効果的です。

産業用蓄電池を活用すれば、電力使用量が多い昼間のピーク時に蓄電池から放電することで、電力会社から購入する電力量を減らし、ピーク需要を削減できます。また、電気料金が安い夜間に充電し、高い昼間に放電する「ピークシフト」も有効です。多くの電力会社では時間帯別料金制度を採用しており、夜間の電力単価は昼間の約半分程度に設定されています。

実際の導入事例では、あるスーパーマーケットチェーンが各店舗に50kWhの蓄電池を導入し、1店舗あたり年間約60万円の電気料金削減に成功しています。

主な目的③:太陽光発電の自家消費率向上

太陽光発電システムを既に導入している企業にとって、産業用蓄電池は自家消費率を大幅に向上させる強力なツールです。太陽光発電は日中にしか発電できないため、発電した電力と企業の電力需要のタイミングがずれることが多いからです。

産業用蓄電池を導入すれば、日中に太陽光発電で生み出した電力を蓄電池に貯めておき、夕方以降や夜間に使用することができます。たとえば、ある物流センターでは150kWhの蓄電池を追加導入したところ、自家消費率が30%から70%に向上し、年間の電気料金が約200万円削減されました。

産業用蓄電池の価格相場と利用できる補助金について

産業用蓄電池の価格は、一般的な相場として1kWhあたり15万円〜25万円程度です。たとえば、100kWhの蓄電池システムを導入する場合、工事費込みで1,500万円〜2,500万円程度の初期投資が必要になります。

ただし、産業用蓄電池の導入には各種補助金制度を活用できる可能性があります。経済産業省の補助金では、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて導入する場合、蓄電池の導入費用の一部(最大で初期投資の3分の1程度)が補助されます。投資回収期間は、一般的には補助金なしで7〜10年、補助金活用で5〜7年程度が目安となります。


「系統用蓄電池」を深掘り解説|電力の安定供給を支えるビジネス

系統用蓄電池は、電力インフラの一部として機能し、社会全体の電力供給を支える重要な役割を担っています再生可能エネルギーの大量導入に伴い、その必要性はますます高まっています。

なぜ今必要?再生可能エネルギーの普及が背景にある

系統用蓄電池が急速に注目されている背景には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの大量導入があります。日本政府は2030年度の電源構成において再生可能エネルギー比率を36〜38%に引き上げる目標を掲げています。

しかし、再生可能エネルギーには発電量が天候や時間帯によって大きく変動するという課題があります。従来の火力発電所や揚水発電所では対応に限界があるため、系統用蓄電池が登場しました。系統用蓄電池は数秒から数分で充放電を切り替えられる高速応答性を持ち、再生可能エネルギーの変動を瞬時に吸収できます。

主な役割:電力系統の周波数や需給バランスを調整

系統用蓄電池の最も重要な役割は、電力系統の周波数調整と需給バランスの維持です。電力系統では、需要と供給が常に一致していなければ周波数が乱れ、最悪の場合、大規模停電が発生してしまいます。

系統用蓄電池は、周波数が基準値より低下した場合には瞬時に放電して電力を供給し、周波数が上昇した場合には充電して余剰電力を吸収します。この調整はミリ秒単位で行われます。また、系統用蓄電池は需給調整市場でも重要な役割を果たしており、この市場に調整力を提供することで収益を得ます。

系統用蓄電池のビジネスモデルと投資の仕組み

■電力市場(容量市場・需給調整市場)で収益を得る

系統用蓄電池の主な収益源は、容量市場と需給調整市場の2つです。容量市場では、「いざという時に電力を供給できる能力」を提供する対価として報酬を受け取ります。2024年度の容量市場では、1kWあたり年間約8,000円程度の価格が形成されています。

一方、需給調整市場では、実際に電力系統の調整を行った対価として収益を得ます。実際のビジネスモデルとしては、容量市場からの安定収入をベースに、需給調整市場での調整実績に応じた変動収入を上乗せする形が一般的です。

■系統用蓄電池事業の将来性と市場規模

系統用蓄電池事業の将来性は非常に高く、日本政府は2030年までに系統用蓄電池を約24GWh導入する目標を掲げており、これは現在の約10倍以上の規模です。この目標達成には約3兆円規模の投資が必要とされています。

系統用蓄電池のコストと事業開始までの流れ

系統用蓄電池事業を実際に開始するには、数億円から数十億円規模の初期投資が必要です。10MWhの系統用蓄電池を建設する場合、総投資額は約15億円〜20億円が目安となります。

事業開始までの流れは、事業計画の策定、設置場所の選定と用地確保、電力会社との系統連系協議、環境アセスメントや建設許可の取得、建設工事、電力市場への登録と運用開始という順序で進みます。


【発展編】産業用と系統用の垣根を越える「VPP(バーチャルパワープラント)」とは?

産業用蓄電池と系統用蓄電池の境界を曖昧にする新しい技術とビジネスモデルが登場しています。それが「VPP(Virtual Power Plant:バーチャルパワープラント)」です。

点在する産業用蓄電池を束ね、一つの発電所のように活用する技術

VPPの基本的な考え方は、多数の小規模分散型エネルギーリソースを統合制御することで、大型発電所と同等の機能を実現するというものです。全国の工場やオフィスビルに設置された産業用蓄電池を束ねれば、系統用蓄電池に匹敵する容量になります。

実証事例としては、関西電力が2023年に約500の事業所や家庭の蓄電池を束ねたVPP実証実験を実施し、合計で約20MWの調整力を需給調整市場に提供しています。

アグリゲーターが仲介役となり、新たな収益機会を生み出す

VPPの仕組みを実現する上で重要な役割を果たすのが、**アグリゲーター(統合事業者)**です。アグリゲーターは、各地に分散する蓄電池を統合管理し、電力市場と個々の設備所有者を仲介します。企業は、自社の蓄電池を電力系統の調整に提供する対価として、報酬を受け取ることができます。


まとめ:あなたの目的に合う蓄電池はどちらか判断できましたか?

産業用蓄電池と系統用蓄電池は、導入主体、使用目的、収益モデルが全く異なります。あなたの組織にとって、どちらの蓄電池が適しているのかを判断するためのポイントを整理しましょう。

自社のコスト削減やBCP対策を考えるなら「産業用蓄電池」

もしあなたが企業の経営者や施設管理者であり、停電時の事業継続強化、電気料金削減、太陽光発電の自家消費率向上を目指しているなら、産業用蓄電池の導入を検討すべきです。産業用蓄電池は、自社の経営効率化とリスクマネジメントのための実用的なツールです。補助金を活用すれば初期投資を抑えられ、5〜7年程度で投資回収も可能です。

電力市場への新規参入や投資を検討するなら「系統用蓄電池」

一方、もしあなたが電力事業者、投資家、インフラ事業を手がける企業であり、電力インフラ事業として新たな収益源構築、再生可能エネルギー関連ビジネス拡大を目指しているなら、系統用蓄電池事業への参入を検討すべきです。系統用蓄電池事業は、初期投資が大きいものの、10〜15年程度での投資回収が見込め、市場規模も今後大きく拡大する見通しです。

どちらの蓄電池を選ぶにしても、「誰が、何のために使うか」という根本的な目的を明確にすることが最も重要です。

エーラベルは電気代削減のための
気軽な相談窓口です。

簡単で手間なくお得な電気料金プランへお切り替えいただけます。

まずはどれだけお安くなるのかお試しください!

エーラベルは電気代削減のための
気軽な相談窓口です。

簡単で手間なくお得な
電気料金プランへ
お切り替えいただけます。

まずはどれだけお安くなるのか
お試しください!

一覧へ戻る