ペロブスカイト太陽電池のデメリットと実用化はいつ?課題を解説
「軽くて、曲がる、次世代の太陽電池」として、ニュースやメディアで大きな注目を集めているペロブスカイト太陽電池。従来のシリコン系太陽電池では設置できなかったビルの壁や、耐荷重の低い屋根にも設置できると期待され、再生可能エネルギーの切り札とも言われています。
しかし、その一方で「実用化はまだ先」「解決すべき課題が多い」という声も聞こえてきます。これほど期待されている技術に、一体どのようなデメリットや問題点があるのでしょうか?そして、私たちが実際にその恩恵を受けられるのはいつ頃になるのでしょうか?
この記事では、ペロブスカイト太陽電池が直面している具体的なデメリットと、その実用化に向けた最新の動向を、専門的な内容も分かりやすく噛み砕いて解説します。
ペロブスカイト太陽電池の3つの主要なデメリット(課題)
夢の技術と期待されるペロブスカイト太陽電池ですが、本格的な普及に向けては、主に3つの大きな課題を克服する必要があります。
低い耐久性(水分・熱・酸素への弱さ)と短い寿命
現在のペロブスカイト太陽電池が抱える最大のデメリットは、耐久性の低さです。主原料であるペロブスカイト結晶は、水分や酸素、熱に触れると結晶構造が壊れやすく、発電性能が著しく劣化してしまいます。
現在主流のシリコン系太陽電池の寿命が20年〜30年であるのに対し、ペロブスカイト太陽電池の寿命はまだ数年〜10年程度とされています。屋外での長期的な安定性を確保するためには、水や酸素の侵入を完全に防ぐ高度な「封止(ふうし)技術」や、熱に強い材料開発が不可欠です。
有害物質である鉛(Pb)の使用問題
高い発電効率を実現するペロブスカイト太陽電池には、現在、有害物質である鉛(Pb)が含まれています。鉛は人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、RoHS指令(ローズしれい)など、国際的な化学物質規制の対象となっています。
もしパネルが破損した場合に鉛が環境中に溶け出すリスクや、将来的な廃棄・リサイクルの問題が懸念されています。この「鉛問題」は、特に環境意識の高い欧州などで実用化を進める上での大きな障壁となる可能性があります。
大面積化と量産化技術が未確立
研究室レベルでは高い変換効率が報告されていますが、その性能を維持したまま大きな面積のパネルを均一に製造する技術がまだ確立されていません。
ペロブスカイト太陽電池は、インク状の材料を塗って乾かす「印刷技術」で製造できるため、低コスト化が期待されています。しかし、面積が大きくなるほど塗りムラができやすく、性能が低下したり、耐久性にばらつきが出たりする課題があります。安定した品質で大量生産(量産化)するための製造プロセスを確立することが、普及に向けた重要なステップとなります。
実用化はいつ?2025年以降に本格化する市場投入
数々の課題はありますが、世界中で研究開発が急速に進んでおり、実用化のスケジュールも具体的に見え始めています。
政府が示す2030年までの社会実装ロードマップ
日本政府(経済産業省)は、グリーン成長戦略の中でペロブスカイト太陽電池の普及に向けた目標を掲げています。2023年5月に策定された導入拡大に向けた官民協議会の報告書では、2025年頃からの市場投入を目指し、2030年には本格的な量産を開始して、既存のシリコン系太陽電池と遜色ない水準までコストを引き下げるというロードマップが示されています。
(参考:経済産業省「ペロブスカイト太陽電池の導入拡大に向けた官民協議会 第二次報告書」)
積水化学工業や東芝による先行的な製品化
国内企業も実用化に向けて着実に歩を進めています。
- 積水化学工業:2023年に、幅1m、長さ30mのフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功したと発表。2025年の事業化を目指し、実証実験を進めています。世界で初めて屋外耐久性10年相当の性能を達成するなど、耐久性の課題解決で世界をリードしています。
- 東芝:独自の成膜技術により、世界最高クラスのエネルギー変換効率を達成。2025年度以降の量産開始を目標に、大型化技術の開発を進めています。
これらの企業の動向から、2025年がペロブスカイト太陽電池の実用化における一つの大きな節目となることが予想されます。
デメリットを上回る4つのメリット
多くの課題があるにもかかわらず、なぜこれほどまでにペロ_ブスカイト太陽電池が期待されているのでしょうか。それは、既存の技術にはない、それを上回るほどの大きなメリットがあるからです。
軽量・柔軟で設置場所を選ばない
最大のメリットは、圧倒的な軽さと薄さ、そして曲げられる柔軟性です。ガラス基板が不要でフィルム状に製造できるため、従来の重いパネルでは設置できなかったビルの壁面、耐荷重の低い工場の屋根、さらにはテントや車のボディといった曲面にも設置可能になります。これにより、都市部の限られたスペースを有効活用した発電が期待できます。
シリコン系を超える高い変換効率の可能性
ペロブスカイト太陽電池は、光を電気に変えるエネルギー変換効率の向上が目覚ましく、研究レベルではすでに主流のシリコン系太陽電池の最高効率を超える数値を記録しています。理論上の変換効率もシリコン系より高いとされ、将来的にはさらに高性能化が進むと期待されています。
曇りの日でも発電できる低照度特性
太陽光が弱い曇りの日や、室内光のようなわずかな光でも発電できるという優れた特性を持っています。これにより、天候に左右されにくく、年間を通じた総発電量を増やすことが可能です。将来的には、IoT機器の電源として室内での活用も期待されています。
印刷技術による低コスト製造への期待
高温での製造プロセスが必要なシリコン系とは異なり、ペロブスカイト太陽電池はインクを塗布するようなシンプルな印刷技術で製造できます。これにより、製造設備への投資を大幅に削減し、将来的には製造コストをシリコン系の半分以下にできる可能性があると言われています。
既存のシリコン系太陽電池との違いを比較
ペロブスカイト太陽電池と、現在主流のシリコン系太陽電池の違いをまとめました。
| 項目 | ペロブスカイト太陽電池 | シリコン系太陽電池 |
|---|---|---|
| 重さ・形状 | 軽量・薄型、曲げられる | 重く、硬い(ガラス基板) |
| 設置場所 | 壁面、曲面、耐荷重の低い屋根 | 主に耐荷重のある屋根や平地 |
| 変換効率 | 非常に高いポテンシャル | 高効率だが理論限界に近い |
| 低照度特性 | 優れている(室内光でも発電) | 弱い光では発電しにくい |
| 製造コスト | 将来的に非常に安くなる可能性 | 量産化で安価になったが限界も |
| 耐久性・寿命 | 課題あり(現在10年程度) | 確立されている(20年以上) |
| 主原料 | ヨウ素、鉛など | シリコン |
デメリット克服に向けた最新の研究開発動向
実用化を阻むデメリットを克服するため、世界中で研究が活発に行われています。
鉛フリー化(スズ置換)の研究
有害な鉛を使わない「鉛フリー」のペロブスカイト太陽電池開発は、最重要課題の一つです。鉛の代わりに、安全性の高いスズ(Sn)を用いた研究が進められています。しかし、現状ではスズ系のものは鉛系に比べて変換効率が低く、またスズ自体が酸化しやすいため耐久性に課題が残っています。効率と耐久性を両立する新しい材料の探索が続けられています。
封止技術による耐久性の向上
弱点である水分や酸素からペロブスカイト層を守るため、高性能な封止技術の開発が進んでいます。積水化学工業が開発した「封止膜」のように、材料そのものの改良と、外部からの劣化要因を遮断する技術の両面からアプローチすることで、耐久性は着実に向上しています。
ペロブスカイト太陽電池に関するよくある質問
家庭用はいつから購入できる?
企業向けの実証実験や限定的な市場投入が2025年頃から始まると予想されますが、一般家庭向けの製品が広く普及するには、量産体制が整い、コストが下がる2030年以降になる可能性が高いと考えられます。
価格はどのくらいになる?
実用化当初は、新しい技術であるため比較的高価になると予想されます。しかし、政府は2030年頃に、現在のシリコン系太陽電池と同等(約14円/W)まで発電コストを下げることを目標としています。量産化が進めば、将来的にはシリコン系よりも安価になることが期待されています。
開発をリードする日本の企業は?
日本はこの分野で世界をリードする存在です。フィルム型の開発で先行する積水化学工業や、高効率化で実績のある東芝のほか、パナソニック ホールディングス、出光興産、大学発ベンチャーのエネコートテクノロジーズなどが活発に研究開発を行っています。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、耐久性、鉛問題、量産化という大きなデメリットを抱えている一方で、それを補って余りある軽量・柔軟性、高効率、低コストといった革新的なメリットを持っています。
- デメリット:耐久性が低く、有害な鉛を含み、まだ量産技術が確立されていない。
- 実用化の時期:2025年頃から市場投入が始まり、2030年頃の本格普及が目標。
- 将来性:デメリットを克服できれば、設置場所の制約を打ち破り、太陽光発電を爆発的に普及させるゲームチェンジャーとなり得る。
課題解決に向けた技術開発は世界中で急速に進んでおり、実用化はもはや夢物語ではありません。この次世代技術が、私たちの暮らしやエネルギーの未来をどのように変えていくのか、今後の動向から目が離せません。