新電力ニュース
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未来につながる種を育てる、エネルギーの「予算」

国会に関するニュースで度々話題になる「政府予算」。
さまざまな政策をおこなうために必要なこの「予算」、その中身をよく眺めてみると、政府の今年度の方針や政策の方向性、支援を進めようと考えている分野や技術などを読み取ることができます。
今回は、資源・エネルギーに関連する予算について、平成31年度はどのような構成になっているのか、そこからどのようなことが読み取れるのか、見てみましょう。


2019年度(平成31年度)の資源・エネルギー関係予算の方向性は?

エネルギー基本計画とは、エネルギーに関する政策についての、中長期的な基本方針を示したもので、すべてのエネルギー政策の土台となるものです。
2019年度の資源・エネルギー予算は、この「第5次エネルギー基本計画」を実行するため、以下の4つを政策の基本的な方向性として定めています。
 
▶ 政府の最優先課題である「福島の復興」を着実に進めること
▶ 2030年のエネルギーミックスを確実に実現すること
▶ リストアイコン 2050年のエネルギー転換・脱炭素化に挑戦すること
▶ エネルギーセキュリティの強化に取り組むこと
 
では、2019年度の資源・エネルギー予算には、どのような特徴が見られるのでしょうか?詳しく見てみましょう。


資源・エネルギー予算からわかる、2019年度のエネルギー政策のポイント

2019年度の予算は、大きく3つに分かれています。
「①福島の復興・創生に向けた取り組み」、「②エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーションの推進」、「③エネルギーセキュリティの強化」です。

2019年度予算の大きな特徴のひとつは、「②エネルギー転換・脱炭素化に向けたイノベーションの推進」に含まれている、水素に関する取り組みの予算が増加していることです。
「(1)水素社会実現に向けた取り組みの抜本的強化」がそれで、2018年度の450億円から、602億円へと増加しています。

水素に関しては、2020年東京五輪時の活用も目指して、福島で世界最大級の再生可能エネルギー(再エネ)から水素をつくる技術の開発や、燃料電池自動車(FCV)および定置用燃料電池の技術開発など、さまざまな研究が今まさに進められています。政府として注力していることが、予算にも表れていると言えるでしょう。水素ステーションがだんだんと増加しているように、水素エネルギーに関する市場は盛り上がりを見せており、2019年2月27日~3月1日まで東京ビッグサイトで開催された「水素・燃料電池展(FC EXPO)」にも、たくさんの関連企業がブースを並べました。

水素に関しては、2020年東京五輪時の活用も目指して、福島で世界最大級の再生可能エネルギー(再エネ)から水素をつくる技術の開発や、燃料電池自動車(FCV)および定置用燃料電池の技術開発など、さまざまな研究が今まさに進められています。政府として注力していることが、予算にも表れていると言えるでしょう。また、水素ステーションの整備や低コスト化のための技術開発に関する予算は、2018年度の約2倍となっています。水素ステーションは、水素を使った燃料電池自動車の普及を図るために整備が欠かせないインフラですが、一方でFCVの普及が進まないことにはビジネスとして成立させるのが難しく、鶏と卵の関係にあります。そこで、先行投資をおこなってステーションを整備する取り組みを政府が支援し、「水素を充填できる場所がないためにFCEVの利用が進まない」という状況を防ごうとしているのです。

2つ目の特徴は、「第5次エネルギー基本計画」で主力電源化を目指すことを明確にした再エネです。今回の予算では、そうした再エネの大量導入を目指すため必要な技術の開発や実証に重きが置かれることとなりました。

たとえば、今まで再エネを設置できなかった場所で発電を可能にする「革新型太陽電池」や「洋上風力」、今までより発電能力が高い「超臨界地熱発電」、既存の電力系統を最大限活用して、一定の条件のもとにより多くの再エネを系統に接続できるようにする「日本版コネクト&マネージ」に関する課題解決など、次世代型の技術開発にも予算が割かれています。

3つ目の特徴は、災害への対応です。2018年度はとても自然災害の多い年でした。そこで、「③エネルギーセキュリティの強化」のうち「(3)国内エネルギー供給網の強靱化」も増額となっています。特に、災害時に地域住民の燃料供給拠点となる「住民拠点サービスステーション(SS)」の整備など、災害対応能力の強化に対する強い意思が見てとれます。


未来につながる種を育てる、資源・エネルギー予算の役割

2019年度予算のうち、いくつかの項目については2018年度より額が減っているものがあります。しかしこれは、必ずしも「そのエネルギー技術への関心を政府が無くした」ということではなく、事業の進捗状況などに応じた予算額の変動など、さまざまな理由があります。また、総額で言えば2018年度からほぼ横ばいとなっている中、どこかのポイントに予算を割くためにはどこかのポイントを少し削るなどメリハリをつけていく必要があります。

たとえば、「CCS」のように、一部の実証試験が完了するなどの理由で、2019年度は減額となったものがあります。また、原子力の予算は、新たな研究開発事業を始める一方、開発終期を迎える事業などが減額になっているものもあります。資源・エネルギー分野の政府予算は、エネルギー転換・脱炭素化の挑戦に向けて「民間の投資を喚起し、将来的には民間企業のビジネスにもつながるものを育てる」という目的を持っています。水素ステーションの例はまさに、民間企業のビジネスとしてはまだ成立しづらいところを、政府の予算で後押しすることで、将来のビジネスへとつなげようとしているものです。特に、グローバルな市場でも勝てる見込みのあるような次世代の技術については、重点的に予算を割いて研究開発を支えていくことが、政府の役割でもあります。


出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/yosan.html

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