床暖房の電気代は高い?エアコンとの料金比較と節約術
「足元からポカポカして気持ちいい」と人気の床暖房。新築やリフォームを機に導入を検討する方が増えていますが、同時に「床暖房は電気代がやばい」「贅沢品なのでは?」といった不安の声もよく耳にします。
実際のところ、床暖房の電気代はどのくらいかかるのでしょうか?最も一般的な暖房器具であるエアコンと比較して、本当にお得なのでしょうか?
この記事では、そんな疑問を解消するために、床暖房のリアルな電気代、エアコンとの徹底比較、そして今日からすぐに実践できる賢い節約術まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。あなたのライフスタイルに最適な暖房選びの参考にしてください。
床暖房とエアコンの電気代を徹底比較
暖房器具を選ぶうえで最も気になるのが、ランニングコストである電気代です。ここでは、床暖房とエアコンの電気代と、設置にかかる初期費用を合わせたトータルコストを比較してみましょう。
1ヶ月の電気代シミュレーション
実際にどのくらいの差が出るのか、同じ条件下で1ヶ月の電気代をシミュレーションしてみます。
【シミュレーション条件】
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- 広さ:リビングダイニング20畳
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- 使用時間:1日8時間
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- 設定温度:22℃
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- 電力料金単価:31円/kWh(公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価)
| 暖房器具 | 1ヶ月の電気代(目安) |
|---|---|
| 床暖房(温水式ヒートポンプ) | 約5,000円~9,000円 |
| エアコン(20畳用・省エネモデル) | 約4,500円~7,500円 |
※上記はあくまで目安です。住宅の断熱性能や外気温、使用状況によって変動します。
シミュレーション結果を見ると、最新の省エネエアコンの方が、床暖房よりも電気代がやや安い傾向にあります。ただし、床暖房は一度部屋が暖まると低い出力で温度を維持できるため、長時間の使用では差が縮まることもあります。
初期費用を含めたトータルコスト比較
暖房設備は長く使うものなので、電気代だけでなく設置にかかる初期費用も重要です。
| 暖房器具 | 初期費用(本体+工事費)の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 床暖房(電気式) | 6畳あたり 約30万円~60万円 | 設置が比較的簡単で初期費用は安いが、ランニングコストは高め。 |
| 床暖房(温水式) | 6畳あたり 約50万円~100万円以上 | 熱源機(エコキュート等)が必要で初期費用は高いが、ランニングコストは安い。 |
| エアコン | 20畳用 約20万円~40万円 | 初期費用は比較的安い。10年~15年で買い替えが必要になる場合が多い。 |
床暖房はエアコンに比べて初期費用が高額になります。しかし、エアコンのように10年~15年での本体買い替えは基本的に発生しません(温水式の熱源機は除く)。長期的な視点で、ランニングコストと快適性、メンテナンス性などを総合的に比較検討することが大切です。
「床暖房の電気代はやばい」と言われる理由
なぜ「床暖房は電気代が高い」というイメージが定着しているのでしょうか。それには、床暖房ならではの特性が関係しています。
立ち上がりに電力を最も消費
床暖房は、床材とその下のコンクリート層などをゆっくりと暖め、その輻射熱(ふくしゃねつ)で部屋全体を暖める仕組みです。そのため、電源を入れてから部屋が快適な温度になるまでに時間がかかり、その立ち上がりの時間に最も多くの電力を消費します。
この特性を知らずに、エアコンと同じ感覚でこまめに電源をON/OFFしてしまうと、立ち上がりの電力消費を繰り返すことになり、結果的に電気代が高くなってしまうのです。
住宅の断熱性能による電気代の変動
床暖房は、住宅の断熱性・気密性に電気代が大きく左右されます。断熱性能が低い家では、せっかく暖めた熱が窓や壁からどんどん逃げてしまいます。そのため、床暖房は常にフルパワーで稼働し続ける必要があり、電気代が高騰する原因となります。
一方で、近年の高気密・高断熱住宅であれば、一度暖めた熱が逃げにくいため、最小限のエネルギーで快適な室温を保つことができます。床暖房は、住宅性能が高い家でこそ真価を発揮する暖房器具と言えるでしょう。
【種類・広さ別】床暖房の電気代の目安
床暖房には大きく分けて「電気式」と「温水式」の2種類があり、それぞれ電気代が異なります。ここでは、種類と部屋の広さ別に1時間あたりの電気代の目安を見ていきましょう。
電気式床暖房の電気代
床下に設置した電熱線ヒーターや特殊なフィルムを発熱させて床を直接暖めるタイプです。
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- メリット:設置が比較的簡単で、初期費用を抑えやすい。
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- デメリット:ランニングコスト(電気代)は温水式に比べて高くなる傾向がある。
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- 1時間あたりの電気代(10畳):約30円~50円
温水式床暖房(ヒートポンプ式)の電気代
エコキュートやヒートポンプなどの熱源機で作ったお湯を、床下のパイプに循環させて床を暖めるタイプです。
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- メリット:空氣の熱を利用してお湯を作るヒートポンプ式は非常に効率が良く、ランニングコストを安く抑えられる。
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- デメリット:熱源機の設置が必要なため、初期費用が高額になる。
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- 1時間あたりの電気代(10畳):約15円~25円
6畳・10畳・20畳の電気代一覧
部屋の広さごとの1時間あたりの電気代の目安をまとめました。
| 広さ | 電気式床暖房 | 温水式床暖房(ヒートポンプ式) |
|---|---|---|
| 6畳 | 約18円~30円 | 約9円~15円 |
| 10畳 | 約30円~50円 | 約15円~25円 |
| 20畳 | 約60円~100円 | 約30円~50円 |
※上記の金額は、安定運転時の目安です。立ち上がり時はこれよりも高くなります。
つけっぱなし運転は電気代の節約になるか
「立ち上がりに電力を最も消費するなら、つけっぱなしの方がお得なの?」という疑問もよく聞かれます。これは、ライフスタイルによって答えが変わります。
つけっぱなし運転の電気代シミュレーション
結論から言うと、数時間程度の外出であれば、電源を切らずに低温でつけっぱなしにしておく方が電気代は安くなるケースが多いです。
こまめにON/OFFを繰り返すと、その都度、冷え切った床を暖め直すために大きな電力が必要になります。一方、つけっぱなしであれば、一度暖まった状態を低い出力でキープするだけなので、結果的に消費電力を抑えられます。
ただし、旅行などで長時間家を空ける場合は、当然ですが電源を切った方が経済的です。
オール電化住宅での最適な運転方法
オール電化住宅で、夜間の電気料金が安くなるプランを契約している場合は、その時間帯を有効活用するのが最も賢い使い方です。
具体的には、電気代が安い深夜から朝方にかけてタイマーで床暖房を運転し、床下のコンクリートなどに熱を蓄えます(蓄熱)。そして、日中は蓄えた熱だけで暖かさを維持し、足りなければ短時間だけ追い焚きするように運転します。この方法により、日中の高い電気代を使わずに済むため、光熱費を大幅に削減できます。
今日からできる床暖房の電気代節約術7選
床暖房は、少しの工夫で電気代を大きく節約できます。ぜひ今日から試してみてください。
最適な温度設定とタイマーの活用
設定温度を1℃下げるだけで、約10%の節電効果があると言われています。快適性を損なわない範囲で、少し低めの温度に設定しましょう。また、起床時間や帰宅時間の1時間ほど前にタイマーで運転を開始し、就寝時や外出時にはOFFになるように設定することで、無駄な運転を防ぎます。
断熱シートや厚手のカーテンの利用
家の中で最も熱が逃げやすいのは窓です。窓に断熱シートを貼ったり、床まで届く厚手のカーテンを閉めたりするだけで、室内の熱が外に逃げるのを防ぎ、暖房効率が格段にアップします。
エアコンやサーキュレーターとの併用
床暖房は足元から、エアコンは上から部屋を暖めます。両方を低い設定温度で併用することで、部屋全体を効率よく、素早く暖めることができます。また、サーキュレーターを使って室内の空気を循環させると、天井付近に溜まりがちな暖かい空気が部屋全体に行き渡り、温度のムラをなくして快適性を高めます。
その他の節約術
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- ラグやカーペットの敷き方に注意する:床暖房の上に厚手のラグやカーペットを敷くと熱が伝わりにくくなります。敷く場合は、床暖房対応の熱伝導率が良いものを選びましょう。
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- 必要なエリアだけ運転する:リビングとダイニングなど、複数のエリアに分けて床暖房を設置している場合は、人がいる場所だけを運転するようにしましょう。
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- 電力会社のプランを見直す:ライフスタイルに合った電力会社のプランに変更することで、電気代の単価そのものを下げられる可能性があります。特にオール電化住宅の方は、深夜電力プランの活用が必須です。
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- フィルターをこまめに掃除する(温水式の場合):温水式床暖房の熱源機にフィルターがある場合、目詰まりすると暖房効率が低下します。定期的に掃除をしましょう。
床暖房の電気代に関するよくある質問
最後に、床暖房の電気代に関してよく寄せられる質問にお答えします。
ガス床暖房との光熱費の違い
温水式床暖房には、電気(ヒートポンプ)の他にガス給湯器を熱源とする「ガス温水式床暖房」もあります。
光熱費は、使用するガスの種類(都市ガスかプロパンガスか)によって大きく異なります。一般的に、都市ガスであれば電気式のヒートポンプと同等か少し高いくらい、プロパンガスはかなり高額になる傾向があります。初期費用はガス式の方が安い場合が多いですが、オール電化住宅の場合は電気式一択となります。
マンションでの電気代の目安
一般的に、マンションは木造戸建てに比べて気密性・断熱性が高く、上下左右の住戸も暖房を使用しているため、熱が逃げにくい環境です。そのため、同じ広さであれば戸建てよりも電気代が安くなる傾向があります。
導入後のメンテナンス費用
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- 電気式床暖房:床下のヒーター部分は非常に寿命が長く、基本的にメンテナンスフリーです。
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- 温水式床暖房:床下のパイプはメンテナンスフリーですが、熱源機であるエコキュートやガス給湯器は、10年~15年で寿命を迎え、交換が必要になる場合があります。また、循環している不凍液も定期的な交換が必要な製品があります。
まとめ
床暖房の電気代は、「やばい」と言われるほど高いわけではなく、暖房器具の種類や住宅の性能、そして使い方次第で大きく変わります。
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- ランニングコスト:最新の省エネエアコンの方が安い傾向にあるが、大差はない。
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- 初期費用:床暖房はエアコンより高額。
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- 節約の鍵:「つけっぱなし」を基本に、タイマーや断熱対策、オール電化プランの活用が効果的。
床暖房の魅力は、電気代だけでは測れない「頭寒足熱」の快適な暖かさにあります。エアコンの温風が苦手な方や、足元の冷えに悩んでいる方にとっては、非常に価値のある設備です。
この記事で解説した電気代の目安や節約術を参考に、ご自身のライフスタイルや価値観に合った、後悔のない暖房選びをしてください。
※この記事に掲載されている具体的な料金はあくまでも目安としてご参考ください。