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自然災害と停電、新電力の災害対応を考える

近年、台風や地震などの自然災害が頻発し、停電リスクが高まっています。2016年の電力自由化以降、多くの新電力会社が参入していますが、災害時の対応力については不安を感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、新電力の災害対応について詳しく解説し、安心して電力を使うための選び方をご紹介します。災害時でも安定した電力供給を受けるために、今から準備しておくべきポイントを一緒に確認していきましょう。


自然災害と停電:新電力の災害対応を考える

自然災害による停電は、私たちの生活に深刻な影響を与える重要な問題です。新電力の災害対応力を理解し、停電リスクを最小限に抑える方法を知ることで、より安心して電力を利用できるようになります。

災害時の停電リスク

日本は世界有数の災害大国であり、地震、台風、豪雨、豪雪など様々な自然災害に見舞われます。これらの災害は電力インフラに深刻な被害をもたらし、長期間の停電を引き起こす可能性があります。

具体的には、2018年の北海道胆振東部地震では、北海道全域で停電が発生し、約295万戸が影響を受けました。また、2019年の台風15号では、千葉県を中心に最大約64万戸が停電し、一部地域では2週間以上の停電が続きました。このような大規模停電は、医療機関や高齢者施設などの重要施設にも影響を及ぼし、命に関わる深刻な問題となります。

停電リスクを考える際に重要なのは、災害の種類によって停電の特徴が異なることです。たとえば、地震による停電は瞬間的で広範囲に及ぶことが多く、台風による停電は風による送電線の損傷が主な原因となります。豪雨災害では、浸水による変電設備の機能停止が長期停電の原因となることもあります。

さらに、現代社会では電力への依存度が高まっており、スマートフォンの充電、冷蔵庫の食品保存、医療機器の稼働など、日常生活のあらゆる場面で電力が必要です。そのため、停電時の影響はますます深刻化しており、災害対応力の高い電力会社を選ぶことの重要性が高まっています。


新電力の災害時対応とは?

新電力会社の災害時対応は、従来の大手電力会社とは異なる特徴があります。供給継続への取り組みと復旧体制の整備、そして顧客との連絡体制の構築が、新電力の災害対応の核となる要素です。

供給継続のための取り組み

新電力会社は、災害時でも安定した電力供給を維持するために、様々な対策を講じています。最も重要なのは、電力の調達先を複数確保することです。一つの発電所に依存せず、複数の発電事業者や卸電力取引所から電力を調達することで、リスクを分散しています。

具体的には、大手新電力会社では、再生可能エネルギー発電所、火力発電所、そして卸電力市場の3つの調達ルートを組み合わせることが一般的です。たとえば、楽天でんきでは、全国の風力発電所や太陽光発電所と長期契約を結び、さらに日本卸電力取引所(JEPX)からの調達も行っています。このような調達の多様化により、一つの発電所が災害で停止しても、他の電源から電力を確保できる体制を整えています。

また、需給バランスの監視と調整も重要な取り組みです。新電力会社は、30分ごとに電力の需要と供給を予測し、バランスを保つ責任があります。災害時には需要パターンが大きく変化するため、リアルタイムでの監視と迅速な調整が求められます。多くの新電力会社では、24時間体制で需給監視センターを運営し、異常事態に即座に対応できる体制を構築しています。

さらに、他の電力会社との連携も欠かせません。電力広域的運営推進機関(OCCTO)を通じて、全国の電力会社が相互に電力を融通し合う仕組みが整備されています。新電力会社もこの仕組みに参加し、災害時には他地域からの電力供給を受けることができます。

復旧体制と連絡方法

新電力会社の復旧体制は、送配電事業者との密接な連携が基盤となります。実際の送電線や変電所の復旧作業は、各地域の送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)が担当するため、新電力会社はこれらの事業者と情報を共有し、復旧計画を立てる必要があります。

復旧作業において新電力会社が果たす役割は、顧客への情報提供とサポートです。多くの新電力会社では、災害時専用のコールセンターを設置し、通常よりも多くのオペレーターを配置して顧客からの問い合わせに対応します。たとえば、エネオスでんきでは、災害時に「緊急時お客様サポートセンター」を開設し、24時間体制で対応にあたります。

連絡方法の多様化も重要なポイントです。電話だけでなく、ウェブサイト、メール、SNS、専用アプリなど、複数の連絡手段を用意することで、災害時でも確実に情報を届けられるよう配慮しています。auでんきでは、au回線を利用した緊急速報メールサービスを活用し、停電情報や復旧見込みを顧客に直接通知するシステムを構築しています。

また、地域密着型の新電力会社では、地域コミュニティとの連携を重視した復旧支援も行っています。地域の自治体や商工会議所と協力し、避難所への電力供給支援や、復旧作業の優先順位決定に地域の実情を反映させる取り組みも見られます。


新電力と大手電力会社の災害時対応の違い

新電力と大手電力会社の災害時対応には、それぞれ異なる特徴があります。電力供給網の構造、復旧スピード、そして顧客サポート体制において、明確な違いが存在します。これらの違いを理解することで、より適切な電力会社選びが可能になります。

電力供給網の比較

大手電力会社の供給網は、長年にわたって構築された垂直統合型のシステムが特徴です。発電から送配電まで一貫して管理していた歴史があり、現在でも関連会社を通じて密接な連携を保っています。たとえば、東京電力エナジーパートナーは、東京電力パワーグリッドと同じ東京電力ホールディングスの傘下にあり、災害時の情報共有や復旧計画の調整が迅速に行われます。

一方、新電力の供給網は、より分散型でオープンなシステムです。複数の発電事業者から電力を調達し、送配電部門は地域の送配電事業者に委託しています。この構造により、柔軟性と競争力を獲得していますが、災害時の調整には より多くの関係者との連携が必要になります。

具体的な違いとして、電源の多様性が挙げられます。大手電力会社は、大規模な火力発電所や原子力発電所を主力とし、安定性を重視した電源構成となっています。新電力会社は、再生可能エネルギーを中心とした小規模分散型の電源や、卸電力市場からの調達を組み合わせており、環境性と経済性を重視した構成となっています。

項目 大手電力会社 新電力会社
電源構成 大規模火力・原子力中心 再エネ・小規模分散型中心
調達方法 自社発電所中心 複数事業者からの調達
送配電 関連会社が担当 地域送配電事業者に委託
連携体制 グループ内連携 複数事業者間連携

復旧スピードの比較

復旧スピードについては、災害の規模と種類によって差が生じます。送配電設備の物理的な復旧は、どの小売電気事業者を選んでいても同じ送配電事業者が担当するため、基本的には同じスピードで復旧します。しかし、電力調達の復旧については、事業者ごとに差が生じる可能性があります。

大手電力会社の場合、自社グループ内の発電所を優先的に活用できるため、電力調達の復旧が比較的スムーズに進むことが多いです。2018年の北海道胆振東部地震では、北海道電力が段階的な復旧計画を実施し、重要施設から順次電力供給を再開しました。

新電力会社の場合、複数の調達先の被害状況を確認し、利用可能な電源を組み合わせて供給を再開する必要があります。このプロセスには時間がかかる場合もありますが、一方で、特定の発電所に依存していないため、被害の影響を受けにくいという利点もあります。たとえば、2019年の台風15号の際には、千葉県内の火力発電所が被害を受けましたが、関東圏外の発電所から電力を調達していた新電力会社は、比較的早期に供給を再開できました。

情報提供とサポート体制の比較

情報提供体制においては、大手電力会社と新電力会社でそれぞれ異なる強みがあります。大手電力会社は、長年の災害対応経験を活かした包括的な情報提供システムを構築しています。停電情報の詳細な地図表示、復旧見込み時間の提供、災害時の安全対策の案内など、豊富な情報を提供しています。

新電力会社は、デジタル技術を活用した効率的な情報提供に力を入れています。スマートフォンアプリやSNSを積極的に活用し、リアルタイムでの情報更新や、顧客との双方向コミュニケーションを重視しています。楽天でんきでは、楽天市場のアカウントと連携したプッシュ通知システムを導入し、停電情報を迅速に顧客に届けています。

サポート体制については、大手電力会社は全国規模のコールセンターと地域営業所を組み合わせた体制を構築しています。災害時には、他地域からの応援要員を派遣し、サポート体制を強化します。新電力会社は、専門性の高いサポートと効率的な対応を特徴としており、顧客一人ひとりの契約内容や使用状況を把握した上で、きめ細やかなサポートを提供しています。


過去の災害における新電力の対応実績

新電力会社の災害対応能力を評価するためには、実際の災害時の対応実績を確認することが重要です。過去の大規模災害での対応を分析することで、新電力の強みと改善点が明確になります。

成功事例と課題

2018年北海道胆振東部地震では、北海道全域で停電が発生する「ブラックアウト」が起こりました。この際、新電力会社の対応には明暗が分かれました。成功事例として、楽天でんきの対応が挙げられます。同社は、顧客への情報提供を最優先とし、停電発生から6時間以内にウェブサイトとメールで状況説明を行いました。また、復旧後も継続的に状況報告を行い、顧客の不安軽減に努めました。

一方で、課題も浮き彫りになりました。一部の新電力会社では、災害時の連絡体制が不十分で、顧客からの問い合わせに適切に対応できないケースがありました。特に、コールセンターの回線がパンクし、数日間連絡が取れない状況が発生した事例もありました。この経験を受けて、多くの新電力会社が災害時の連絡体制を見直し、複数の連絡手段を用意するようになりました。

2019年台風15号(房総半島台風)では、千葉県を中心に大規模停電が発生しました。この災害では、新電力会社の地域密着型サポートが注目されました。地域新電力の「ちばでんき」は、地元自治体と連携し、避難所への電力供給支援や、復旧作業の進捗情報を地域住民に詳細に提供しました。また、高齢者世帯への個別訪問も実施し、大手電力会社では困難なきめ細やかな対応を実現しました。

2020年7月九州豪雨では、再生可能エネルギー中心の新電力が直面する課題が明らかになりました。太陽光発電所の多くが浸水被害を受け、一部の新電力会社では電力調達に支障が生じました。しかし、「九州電力みらいでんき」は、事前に調達先を分散していたため、被害を最小限に抑えることができました。この事例は、リスク分散の重要性を示すものとなりました。

2021年2月の寒波では、電力需要の急激な増加により、電力市場価格が高騰しました。この際、市場調達に依存していた一部の新電力会社が経営困難に陥りました。しかし、「ENEOSでんき」のように、自社の石油精製設備を活用した発電と市場調達を組み合わせていた会社は、安定した供給を維持できました。この事例は、調達戦略の多様化の重要性を物語っています。

これらの実績から、成功要因として以下の点が挙げられます。

迅速で透明性の高い情報提供

複数の連絡手段の確保

地域との密接な連携

電力調達先の分散化

災害時対応体制の事前準備

一方、今後の課題として、

極端な気象条件下での供給安定性の確保

市場価格変動への対応力強化

災害時のサポート体制の更なる充実

他事業者との連携強化

これらの経験を踏まえ、現在の新電力会社は災害対応力の向上に継続的に取り組んでいます。


災害時に備えた電力供給の確保方法

災害時の電力供給を確保するためには、適切な電力会社選び個人レベルでの備えの両方が重要です。また、停電時の対処法を事前に把握しておくことで、被害を最小限に抑えることができます。

新電力選びのポイント

災害対応力の高い新電力会社を選ぶ際には、以下の要素を総合的に評価することが重要です。

まず、電力調達の多様性を確認しましょう。複数の発電事業者から電力を調達し、特定の電源に依存していない会社を選ぶことで、災害時のリスクを分散できます。具体的には、再生可能エネルギー、火力発電、そして卸電力市場からの調達をバランス良く組み合わせている会社が理想的です。たとえば、「東京ガスの電気」は、自社のLNG火力発電所、提携する再エネ発電所、そして市場調達を組み合わせた多様な調達構成を実現しています。

災害時の情報提供体制も重要な選択基準です。ウェブサイト、メール、SNS、専用アプリなど、複数の連絡手段を用意している会社を選びましょう。また、過去の災害時の対応実績を確認し、迅速で正確な情報提供を行った会社を優先することをお勧めします。

サポート体制の充実度も見逃せないポイントです。24時間対応のコールセンターを設置し、災害時に専用の相談窓口を開設する会社を選ぶことで、緊急時の安心感が大きく向上します。また、地域密着型の新電力会社の場合、地域の実情を理解したサポートを受けられる可能性があります。

選択基準 確認ポイント 優良事例
調達多様性 複数電源からの調達 再エネ+火力+市場調達
情報提供 複数連絡手段の確保 WEB+メール+SNS+アプリ
サポート体制 24時間対応体制 災害時専用窓口設置
地域連携 自治体との協力関係 避難所への電力供給支援

家庭用蓄電池、自家発電設備の導入

家庭用蓄電池は、停電時の電力確保において最も効果的な設備の一つです。現在主流のリチウムイオン蓄電池システムは、容量5-10kWhで価格帯が80万円-150万円程度となっています。たとえば、パナソニックの「エネグーン」シリーズは、容量5.6kWhで約100万円、これにより冷蔵庫、照明、スマートフォンの充電を約24時間継続できます。

太陽光発電システムとの組み合わせにより、更なる効果が期待できます。昼間の太陽光発電で蓄電池を充電し、夜間や停電時に使用することで、数日間の電力自給が可能になります。4kWの太陽光パネルシステム(約120万円)と5kWhの蓄電池を組み合わせた場合、年間約15万円の電気代削減効果があり、災害対応と経済性を両立できます。

自家発電設備として、家庭用燃料電池(エネファーム)も有効な選択肢です。都市ガスやLPガスを燃料として電気と熱を同時に生成し、停電時でも継続的な電力供給が可能です。パナソニックのエネファーム(約150万円)は、最大700Wの発電能力があり、停電時でも照明や通信機器を稼働させることができます。

ポータブル電源は、初期投資を抑えて災害対策を始めたい方に適しています。容量500Wh程度のポータブル電源(5-8万円)で、スマートフォンの充電やLED照明を数日間使用できます。アンカーの「PowerHouse」シリーズやゴールゼロの「Yeti」シリーズなど、信頼性の高い製品を選ぶことが重要です。

停電時の対処法

停電発生時の初期対応として、まず安全確保を最優先に行いましょう。電気製品の電源を切り、ブレーカーを落として感電事故を防止します。また、懐中電灯やスマートフォンのライトを使用し、ろうそくは火災リスクがあるため避けましょう。

情報収集は停電対応の重要な要素です。電池式のラジオやスマートフォンを活用し、停電の原因や復旧見込みを確認します。契約している電力会社のウェブサイトやSNSアカウントをチェックし、最新の復旧情報を入手しましょう。また、自治体の防災アプリや緊急速報メールも重要な情報源となります。

食品の保存については、冷蔵庫の扉を開ける回数を最小限に抑え、保冷効果を維持します。停電が長期化する場合は、保冷剤や氷を活用し、傷みやすい食品から優先的に消費しましょう。クーラーボックスがあれば、重要な医薬品や食品を一時的に移すことも有効です。

暖房・冷房対策も重要です。冬期の停電では、重ね着や毛布で保温し、石油ストーブ(電気を使わないタイプ)があれば活用します。夏期の停電では、扇子やうちわ、冷却タオルを使用し、水分補給を心がけます。高齢者や乳幼児がいる家庭では、特に体温管理に注意が必要です。

通信手段の確保として、スマートフォンの電池を節約し、必要な連絡のみに使用します。モバイルバッテリーや手回し充電器があれば、電池切れの心配を軽減できます。また、家族や親戚との連絡方法を事前に決めておき、災害時に確実に安否確認ができるよう準備しておきます。


まとめ:安心して電力を使える未来に向けて

新電力の災害対応力は、電力自由化の進展とともに着実に向上しています。多様な電力調達、充実した情報提供体制、そして地域密着型のサポートなど、大手電力会社とは異なる強みを活かした災害対応が実現されています。

重要なのは、災害対応力の高い電力会社を選ぶことと、個人レベルでの備えを充実させることの両方に取り組むことです。蓄電池や自家発電設備の導入、停電時の対処法の習得など、多層的な対策により、災害時の電力確保を実現できます。

今後も気候変動の影響により、自然災害のリスクは高まることが予想されます。しかし、適切な準備と対策により、安心して電力を使える未来を築くことは十分可能です。まずは、現在の電力契約を見直し、災害対応力の観点から最適な選択を検討してみてはいかがでしょうか。

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