「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み⑥

温室効果ガス(GHG)排出削減のための国際的な枠組みである「パリ協定」に基づき、各国は自国の事情に合わせたGHG削減・抑制目標を策定しています。主要先進国の取り組みを紹介するシリーズの6回目は、フランスの施策と進捗状況についてご紹介しましょう。


GHG40%削減の目標を掲げるが、実績は目標ラインより上ぶれ

GHG削減目標として、フランスは1990年比で2030年に40%削減するという目標を示しています。これはEU(欧州連合)が示した目標と同じ水準です。進捗状況は、2016年時点で18%の削減実績となっており、目標ラインより上ぶれしています。直近3年間でも、微増傾向となっているため、削減目標の達成のためにはさらなる取り組みが必要です(※)。

※「目標ライン」は基準年度の実績と目標年度の実績予測値とを結んだ場合のラインを示しており、年度ごとの特性(政策・経済状況)などを加味して算出した数値ではありません。

 
フランスのGHG削減の進捗状況

フランスのGHG削減の進捗状況

 
フランスのGHG排出構造はどうなっているのでしょうか。フランスの場合、GHG排出のうち、エネルギー起源CO2(燃料の燃焼、供給された電気や熱の使用にともなって排出される、エネルギーを起源としたCO2)が占める割合は68%です。そのうちの10%が発電に由来するもの、90%が運輸・家庭・産業部門といった需要家(エネルギーの利用者)による非電力エネルギー消費(発電以外のエネルギー利用)に由来するものとなっています。

発電由来の排出が25%を占める英国、39%を占める米国などと比べると、発電由来のCO2の割合がずいぶん低く抑えられています。これは、石油や石炭など化石燃料を使わない「非化石電源」(石油やガスといった化石燃料以外のエネルギーを使って電気をつくる方法)である、原子力発電や再生可能エネルギー(再エネ)などが電源のなんと9割を占めているため、発電によるCO2の排出が少ないことが背景にあります。フランスにおける非化石電源比の割合は、2016年ですでに91%(原子力74%、再エネ18%)と高い水準です。

ただし、すでに高い水準にあるがゆえに、CO2排出量を減らすべく、非化石化を進める余地は限られていると言えます。こうした状況から、CO2削減を進めるためには、省エネルギーの促進がより重要となります。

 
フランスの中期目標とその推移

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<p style=(出典)IEA World Energy Balancesなどを基に資源エネルギー庁作成

 


非化石電源の比率は、すでに高い水準を達成

フランス政府は、原子力の電源比率を2035年に50%まで引き下げる一方、再エネの電源比率を2030年に40%まで引き上げるとしています。これが実現すれば、非化石電源の比率は、結果として現状の約9割を維持することとなります。では、それぞれの電源について、詳しく見ていきましょう。

 
フランスの電源構成(発電電力量:55万GWh ※2016年)

フランスの電源構成(発電電力量:55万GWh ※2016年)/></p>
<p style=(出典)IEA World Energy Balancesなどを基に作成

 

①再エネ
フランス政府は、再エネ電源の比率を、2030年までに40%とする目標を示しています。2000年に策定された法律に基づいて、再エネで発電した電気を国が決めた価格で買い取るよう電力会社に義務づけた「固定価格買取制度(FIT)」などを実施。再エネ電源の比率は、2010年の14%から2016年には18%まで増加しました。ただ、FITでは欧州主要国と比べて高い買い取り価格を設定しているものの、再エネ電源比の増加率そのものは低くなっています。

2035年までに原子力発電の比率を50%まで引き下げつつ非化石電源比率を維持するためには、非化石電源比率の増加が必要ですが、2010年以降の再エネ電源比の増加率は、目標よりも低い水準となっています。

 
②原子力
オイルショックの後、エネルギー自給率を高めるために原子力発電を推進したフランスは、2016年にはすでに電源構成の74%が原子力発電となっています。先ほどご紹介したように、その発電比率は2030年までに50%まで引き下げるという方針が示されていますが、2015年に「エネルギー移行法」に基づいて示された方針では、その期限は「2025年まで」とされていました。

しかしその後の2018年11月に、温暖化対策などを理由として、2035年まで期限を延期する方針を発表しました。当初の計画では、稼働中の58基の原子炉のうち、14基の発電を2025年までに停止する予定でしたが、もっとも古い2基のみ停止と決定。残りの12基の停止については、2025年以降に欧州全体での電力市場(電力を融通しあう市場)などがどういう状況になるか次第で決定する、とされました。

その背景には、原子力発電を減らす代わりに太陽光や風力などの再エネ比率を上げた場合、天候によって左右される発電量の不安定さをどのようにして調整していくかという課題があります。電気を蓄える蓄電施設がじゅうぶんに整備されていない状態で、このような再エネの導入を進めてしまうと、急な電力不足に備えるため火力発電所を増設する必要が生じます。またフランス政府は、当初の予定どおり原子力発電の比率を低下させると、GHG排出の増加につながる可能性があることも理由のひとつに上げています。

 
③火力
すでに非化石電源の比率が約9割と高いために、火力発電の電源比率は9%となっています。火力発電の燃料の内訳は、2016年時点でガス火力発電6%、石炭火力発電2%で、このうち石炭火力発電については、2022年までに停止することとなっています。


従来とは異なる省エネルギーの取り組みが必要

ご紹介したとおり、フランスがGHG削減目標を達成するためには、省エネルギーが重要となります。2030年には最終エネルギー消費量を2012年比で20%削減することを目標としていますが、2016年時点では1%の削減実績となっています。目標を達成するためにはさらなる削減が必要です。

なお、フランスのエネルギー消費効率は、産業・運輸部門ともにOECD(経済協力開発機構)の平均よりも高い水準となっているため、さらなる改善のためには従来とは違った取り組みが必要になります。2018年に発表された「中期エネルギー計画(PPE)」の中では、CO2の排出量が少ない「低排出量自動車」(電気自動車など)への税控除、住宅のエネルギー効率を高くするリノベーションのための支援策などをおこなう方針が示されており、今後、これらの政策効果が注視されます。


出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/pariskyotei_sintyoku6.html