2019年、実績が見えてきた電力分野のデジタル化~電力データ編

スマートメーターがリアルタイムな電力データの活用を可能に
 
電気事業を営む上で得られる情報(電力データ)には、発電分野であれば燃料の実績データや出力(発電)の実績データなど、送配電分野であれば送電線の潮流(電気の流れ)データなど、小売分野であれば顧客情報など、さまざまなデータが存在します。

中でも送電・配電分野における電力データのうち、電気の使用量や使用時間などの電力使用状況に関するデータは、デジタル技術を使って遠隔で検針ができる「スマートメーター」の登場により、これまで以上に正確なデータを容易に集められるようになったことから、利活用が期待されています。
 

電力データの例
電力データの例

これだけさまざまな電気機器が日常生活の中で使われるようになった現代において、電力の使用状況に関するデータは、世帯活動を把握することが可能であると言えます。また、大きな地域というくくりで見れば、地域ごとの電力消費に特性があるかなどの分析もできる可能性がありますし、災害時においては、避難状況などの可視化につながる可能性もあります。

さらに、この電力データにさまざまなデータを組み合わせることで、より多様なサービスを、顧客のニーズに合わせて提供することも可能になります。電力産業にとどまらず、さまざまな産業で、電力データを活用した新たなサービスが生まれることが期待されています。
 

期待される新たなサービス創出
期待される新たなサービス創出
 

電力データを使って何ができる?ユニークで新しいアイデア
 
スマートメーターから収集できる電力データを活用した新しいアイデアやサービスとして、どんなものが期待されているかをご紹介しましょう。中には、すでに実用化に向けて動き出しているものもあります。
 

■電力データ×運輸業
人手不足が深刻な運輸業。特に負担となっているのは、届け先が不在の場合などに発生する再配達です。そこで、スマートメーターから収集したリアルタイムの電力使用量データと、過去の配送実績、渋滞や天候の情報を組み合わせ、在宅状況や交通事情をふまえた最適な配送ルートを設定することで、よりスムーズな配送作業を実現し、再配達の負担を減らすアイデアが検討されています。配達業務の効率化により、配達にともなうCO2の削減といった効果も期待されます。
 

■電力データ×家電メーカー
スマートメーターのデータからは、家の中のさまざまな家電の使用状況を把握することができます。この使用状況をAIを使って分析することで、それぞれの家電の最適な利用状況をコントロールし、状況に応じて電力使用量を調整することができると考えられています。
 

■電力データ×銀行業
なりすましによる不正な銀行口座の開設が問題になっていますが、電力会社が持っている電力設備情報の一部を活用することで、それを防止できると考えられています。すでに、関西電力株式会社と、不正検知サービスを提供する株式会社カウリスが提携し、銀行の口座開設申込みにおける本人確認で実証事業をおこないました。
 


 

■電力×AI
スマートメーターから収集した実際の電力使用量や将来の使用量などのデータをもとに、バーチャル空間で、住宅や発電所などの電力ネットワークをシミュレーションで再現。そのデータをAIに学習させます。あらゆる状況における最適化をAIに学習させることで、より現実に近い発電・消費電力の予測をおこなうことが可能になると考えられています。
 

■電力×その他いろいろ
上記にあげた以外にも、さまざまな活用法が考えられています。いくつかご紹介しましょう。
 

▶スマートメーターのデータをもとに、規則正しい生活をしていると考えられる人を推計し、保険料を安くする保険の新メニューの開発
▶スマートメーターのデータが普段とちがう使用パターンになった時に、迅速に対応する、自治体などによる見守りサービス
▶スマートメーターのデータを分析し、エリアごとの在宅率の傾向や、特定の日時の推定在宅人口を予測して、災害発生時の避難計画に反映

 

個人情報を保護しながら電力データを活用するために、残る課題
 

期待される電力データの活用ですが、実際にはまだまだ多くの課題が残っています。

課題のひとつが、電力使用量などの電力データは個人情報にあたるため、利活用にあたっては、個人情報保護を大前提としながら、具体的な活用のニーズや効果などを考えて必要なルールを整備し、提供の対象とするデータを整理する必要があるということです。

現在、検討されているスマートメーターからの提供データには大きく3種類があります。1つのメーター単位のデータで個人の識別が可能な「個人情報」、個人情報から氏名などを削除して特定の個人を識別できないよう加工された「匿名加工情報」、複数人の情報を分類し集計した「統計情報」です。
 


 

これまでは、匿名性の高い「統計情報」のみの利用が検討されてきました。しかし、台風などによる被害が発生した場合、電力会社は自治体など関係者と連携する必要があり、個別の情報を共有することも不可欠となります。たとえば、スマートメーターを通じた各住宅の電力使用状況や、個別の利用者の被害情報がふくまれた配電線地図などがあれば、被災からの復旧に役立つでしょう。あるいは、電力データを活用することで、防災計画をより精度が高いものにしたり、避難所に物資を計画的に配置するといったことができるかもしれません。

こうした個人情報をふくむデータの活用を進めるためには、適切に情報の提供や利用がおこなわれるような制度の整備が必要です。情報セキュリティを確保するのはもちろん、個人が自分の情報をコントロールできる(利用目的や範囲に応じて、情報提供の拒否や同意ができる)状態も確保するようなしくみが求められます。

そこで、「情報銀行」のしくみを基本としながら制度を整備することが検討されています。「情報銀行」とは、認定を受けた組織が個人から委任を受け、本人の同意の範囲内で第三者へ情報提供をおこなうなど、情報を適切に管理するしくみです。消費者保護のため、情報の提供先について第三者が審議・助言をおこなうことなどが定められており、電力データ活用に当たっても、中立性の高い組織による監視・監督の必要性が議論されています。

また、電気事業は法令に基づいて運営されていることから、こうした法令との整合性も必要となります。このようにさまざまな論点が、委員会などで検討されています。
 

電力データ活用を検討する場「グリッドデータバンク・ラボ」
電力データ活用を検討する場「グリッドデータバンク・ラボ」

事業者側でも、2018年、「グリッドデータバンク・ラボ」が発足し、電力10社とデータの利用を希望する約70の企業・団体が参画し、データ活用について検討しています。

グリッドデータバンク・ラボは、東京電力パワーグリッド株式会社および株式会社NTTデータが設立した有限責任事業組合で、その後、関西電力株式会社と中部電力株式会社も出資者として加わりました。データ利用側として参画しているのは、東京都足立区や、一般財団法人日本気象協会、地図データを取り扱う株式会社ゼンリン、株式会社横浜銀行などです。

このラボでは、電力データをどう活用できるかのデモ展示、企業同士のマッチングや交流機会の提供、アイデアの実用化に向けた支援などを実施して、電力データを活用した新しいビジネスモデルを推進しています。

 

個人情報に配慮しながら、どのように電力データを利活用して新たな価値を創りだすかということは、産官学の連携のもと、業界や関連団体全体で考えていくべきものです。適切なルール整備によって、スマートメーターデータの活用がさらに拡大していくことが期待されます。
 


出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/digitalization2019_3.html